社労士 用語集
社労士の学習で出てくる用語173語の意味を、分野別にまとめました。用語を選ぶと、関連する用語やその用語が出てくる問題へ進めます。
労働基準法(20語)
- 休憩時間
- 休憩時間とは、労働者が労働から離れることを保障された時間である。使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければならない。 休憩は原則として一斉に与え(労使協定があれば例外可)、労働者に自由に利用させなければならない。途中付与・一斉付与・自由利用を休憩の3原則という。
- 休業手当
- 休業手当とは、使用者の責めに帰すべき事由で労働者を休業させた場合に、使用者が休業期間中その労働者に支払わなければならない手当で、額は平均賃金の100分の60以上である。 経営上の理由による休業など、民法上の帰責事由より広く使用者側の事情が含まれる。天災事変などの不可抗力による休業は対象にならない。
- 労働条件の明示
- 労働条件の明示とは、使用者が労働契約を結ぶときに、賃金、労働時間その他の労働条件を労働者に明示しなければならないという義務である。契約期間、就業の場所と業務(変更の範囲を含む)、始業・終業時刻、賃金などの事項は書面の交付などで明示する。 明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に契約を解除でき、就業のため住居を変えた人が解除の日から14日以内に帰郷するときは、使用者は旅費を負担する。
- 労働者の定義
- 労働基準法上の労働者とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。労働者かどうかは契約の名称ではなく、指揮監督のもとで働いているか、報酬が労務の対価かといった実態で判断される。同居の親族のみを使用する事業や家事使用人には労働基準法は適用されない。
- 均等待遇
- 労働基準法上の均等待遇とは、使用者が労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはならないという原則である。性別は列挙されておらず、性別による賃金差別は男女同一賃金の原則(第4条)で、募集・採用などは男女雇用機会均等法で扱う。
- 年次有給休暇の初回付与
- 使用者は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、継続または分割した10労働日の年次有給休暇を与えなければならない。これが初回の付与で、その後は継続勤務1年ごとに日数が加算される。
- 強制労働の禁止
- 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。労働基準法の中で最も重い罰則が定められている規定である。
- 法定労働時間
- 法定労働時間とは、労働基準法が定める労働時間の上限で、休憩時間を除き1週間について40時間、1日について8時間である。これを超えて労働させるには、労使協定(36協定)の締結と届出が必要で、超えた時間には割増賃金を支払う。 常時10人未満の商業・接客娯楽業などの特例措置対象事業場は、1週44時間とされている。
- 解雇予告
- 解雇予告とは、使用者が労働者を解雇しようとする場合に、少なくとも30日前にその予告をしなければならないという義務である。30日前に予告しない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う。予告の日数は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮できる。 天災事変などで事業の継続が不可能になった場合や、労働者の責めに帰すべき理由による場合は、労働基準監督署長の認定を受ければ予告は不要である。日々雇い入れられる人など一部の人には適用されない。
- 賃金支払の原則
- 賃金支払の原則とは、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないというルールである(賃金支払の5原則)。 法令や労働協約に定めがある場合は通貨以外で支払え、労働者の同意があれば口座振込や一定の資金移動業者の口座への支払い(いわゆるデジタル払い)もできる。法令の定めや労使協定がある場合は一部を控除できる。臨時の賃金や賞与は毎月払・一定期日払の例外である。
- 賠償予定の禁止
- 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりしてはならない。労働者の退職の自由を不当に縛らないための規定である。実際に生じた損害について、使用者が労働者に賠償を請求すること自体は禁止されていない。
- 年次有給休暇
- 年次有給休暇とは、一定期間継続勤務した労働者に、賃金を受けながら休むことを保障する休暇である。6か月継続勤務・全労働日の8割以上出勤で10労働日が付与され、その後は勤続年数に応じて最大20労働日まで増える。所定労働日数が少ない人には比例付与がある。 労働者が請求した時季に与えるのが原則で(時季指定権)、事業の正常な運営を妨げる場合に限り使用者は時季を変更できる(時季変更権)。年10日以上付与される労働者には、使用者が年5日を時季を指定して取得させる義務がある。請求権の時効は2年。
- 36協定
- 36協定とは、法定労働時間を超えて、または法定休日に労働させるために、使用者が過半数労働組合(ないときは過半数代表者)と書面で結び、労働基準監督署長に届け出る労使協定である。労働基準法第36条に基づくことからこう呼ばれる。 時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がある場合(特別条項)でも、年720時間以内、休日労働を含め単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内、月45時間を超えるのは年6か月までとされる。
- 割増賃金
- 割増賃金とは、時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合に、使用者が通常の賃金に上乗せして支払わなければならない賃金である。割増率は、時間外労働が2割5分以上(1か月60時間を超える部分は5割以上)、法定休日の労働が3割5分以上、深夜(午後10時から午前5時まで)の労働が2割5分以上である。 割増賃金の基礎となる賃金からは、家族手当、通勤手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金などを除く。
- 平均賃金
- 平均賃金とは、算定すべき事由の発生した日以前3か月間に労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額である。解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇中の賃金、災害補償、減給の制裁の限度額などの計算に使う。 日給制・時間給制などの場合は、賃金総額を労働日数で割った額の100分の60が最低保障となる。業務上の傷病による休業期間、産前産後休業期間などは期間と賃金から除き、臨時に支払われた賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は総額に含めない。
- 変形労働時間制
- 変形労働時間制とは、一定期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間(40時間)を超えない範囲で、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度である。1か月単位(労使協定または就業規則で定める)、1年単位(労使協定で定め、1日10時間・1週52時間などの限度がある)、1週間単位の非定型的変形労働時間制(小規模の小売業・旅館・飲食店など)がある。
- フレックスタイム制
- フレックスタイム制とは、就業規則などで始業・終業の時刻を労働者の決定に委ね、労使協定で清算期間(上限3か月)とその期間の総労働時間などを定めて導入する労働時間制度である。清算期間を平均して1週40時間を超えない範囲で、日々の労働時間を労働者が決められる。清算期間が1か月を超える場合は、労使協定の届出が必要になる。
- 就業規則
- 就業規則とは、労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場の規律を定めた規則である。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出なければならず、作成・変更の際には過半数労働組合(ないときは過半数代表者)の意見を聴く。作成した就業規則は労働者に周知しなければならない。 減給の制裁を定める場合、1回の額は平均賃金の1日分の半額、総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない。
- 産前産後休業
- 産前産後休業とは、労働基準法が定める妊産婦の休業である。使用者は、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の女性が請求した場合は就業させてはならず、産後8週間を経過しない女性も就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障がないと認めた業務には就かせてよい。 産前産後休業の期間とその後30日間は解雇が制限される。
- 最低年齢
- 労働基準法上の最低年齢とは、使用者が児童を労働者として使用できる年齢の下限で、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで(中学校卒業まで)は使用してはならない。ただし、非工業的事業で健康と福祉に有害でない軽易な業務は、労働基準監督署長の許可を受けて満13歳以上の児童を修学時間外に使用できる(映画の製作・演劇の事業は満13歳未満も可)。
労働安全衛生法(15語)
- 事業者の責務
- 労働安全衛生法上の事業者の責務とは、法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場の労働者の安全と健康を確保するようにしなければならないという義務である。あわせて、国が実施する労働災害防止の施策に協力するようにしなければならない。
- 作業環境測定
- 作業環境測定とは、作業環境の実態を把握するため、空気環境その他の作業環境について行う測定(デザイン・サンプリング、分析を含む)である。事業者は、有害な業務を行う屋内作業場など政令で定める作業場で、定められた方法で作業環境測定を行い、その結果を記録しなければならない。 結果は評価し、必要に応じて施設・設備の設置や健康診断の実施などの措置を講じる。
- 健康診断
- 労働安全衛生法上の健康診断とは、事業者が労働者に対して医師による健康診断を行う義務で、雇入れ時の健康診断、1年以内ごとに1回の定期健康診断、有害業務に従事する人への特殊健康診断などがある。 労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならないが、事業者が指定した医師の健康診断を希望しない場合は、他の医師の健康診断を受けて結果を証明する書面を提出できる。
- 労働安全衛生法の目的
- 労働安全衛生法の目的は、労働基準法と相まって、危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進など、労働災害の防止に関する総合的・計画的な対策を推進し、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することである。
- 労働者の責務
- 労働安全衛生法上の労働者の責務とは、労働者が労働災害を防止するために必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならないというものである。
- 危険性等の調査
- 危険性等の調査(リスクアセスメント)とは、事業者が、建設物・設備・原材料・作業行動などに起因する危険性や有害性を調査し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めることである。 化学物質以外の調査は、製造業など省令で定める業種の事業者に限られる。通知対象物(一定の化学物質)のリスクアセスメントは別の条文で義務とされている。
- 就業制限
- 就業制限とは、クレーンの運転など政令で定める危険な業務について、都道府県労働局長の免許を受けた人や技能講習を修了した人など、資格を持つ人でなければ就かせてはならないという制限である。業務に就く人は、資格を証する書面を携帯しなければならない。
- 心理的負担の程度を把握する検査
- 心理的負担の程度を把握する検査(ストレスチェック)とは、事業者が医師、保健師などに行わせる、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査である。結果は本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供してはならない。高ストレスと判定された人が申し出たときは医師による面接指導を行う。 常時50人未満の事業場は当分の間、努力義務とされている(2025年の法改正で義務化が決まり、2028年4月1日の施行までは努力義務)。
- 総括安全衛生管理者
- 総括安全衛生管理者とは、一定規模以上の事業場で、安全管理者・衛生管理者を指揮し、労働者の危険・健康障害の防止、安全衛生教育、健康診断などの業務を統括管理する人である。工場長など事業の実施を統括管理する人を選任する。 選任が必要な規模は業種で異なり、建設業・運送業などは常時100人以上、製造業などは300人以上、その他の業種は1,000人以上である。
- 衛生委員会
- 衛生委員会とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場(業種を問わない)に設置が義務づけられる委員会で、労働者の健康障害の防止や健康の保持増進に関する重要事項を調査審議し、事業者に意見を述べる。 委員は議長(総括安全衛生管理者など)、衛生管理者、産業医、衛生に関する経験のある労働者で構成し、議長以外の委員の半数は過半数労働組合などの推薦に基づいて指名する。毎月1回以上開催する。
- 雇入れ時等の安全衛生教育
- 事業者は、労働者を雇い入れたときと作業内容を変更したときに、その労働者が従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければならない。業種や雇用形態(パート・有期など)にかかわらず行う。 また、危険・有害な業務に就かせるときは、その業務に関する特別教育を行わなければならない。
- 安全管理者
- 安全管理者とは、林業、建設業、製造業、運送業など政令で定める業種で、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任し、総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち安全に係る技術的事項を管理させる人である。一定の学歴と実務経験があり研修を修了した人などから選任し、作業場を巡視して危険を防止する措置を講じる。
- 衛生管理者
- 衛生管理者とは、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任し、総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち衛生に係る技術的事項を管理させる人である。都道府県労働局長の免許を受けた人などから選任し、選任すべき人数は事業場の規模に応じて増える。少なくとも毎週1回作業場等を巡視しなければならない。
- 産業医
- 産業医とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場で、事業者が選任し、労働者の健康管理などを行わせる医師である。労働者の健康管理に必要な医学の知識について一定の要件を満たす医師から選任する。常時1,000人以上(一定の有害業務では500人以上)の事業場では専属の産業医が必要で、3,000人を超える事業場では2人以上を選任する。 産業医は事業者に勧告ができ、少なくとも毎月1回(一定の条件で2か月に1回)作業場等を巡視する。
- 面接指導
- 面接指導とは、医師が問診などで労働者の心身の状況を把握し、必要な指導を行うことである。事業者は、休憩時間を除き1週40時間を超えて労働させた時間が1か月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出たときは、医師による面接指導を行わなければならない。 研究開発業務に従事する人や高度プロフェッショナル制度の対象者は、一定の時間を超えると申出がなくても面接指導を行う。結果に基づき医師の意見を聴き、必要な措置を講じる。
労働者災害補償保険法(17語)
- 二次健康診断等給付
- 二次健康診断等給付とは、労災保険が行う、脳・心臓疾患を予防するための給付である。事業者が行う直近の定期健康診断等(一次健康診断)で、血圧・血中脂質・血糖・腹囲などの検査のいずれの項目にも異常の所見があると診断された労働者に、請求に基づいて二次健康診断と特定保健指導を行う。 既に脳血管疾患や心臓疾患の症状がある人は対象外で、二次健康診断で症状があると認められた人には特定保健指導を行わない。
- 休業補償給付
- 休業補償給付とは、業務上の負傷・疾病の療養のため労働できず、賃金を受けない日の第4日目から、労災保険が支給する給付である。額は1日につき給付基礎日額の100分の60に相当する額で、別に社会復帰促進等事業の休業特別支給金(100分の20)が上乗せされる。 最初の3日間(待期期間)は労災保険から支給されず、業務災害の場合は事業主が労働基準法に基づき休業補償を行う。
- 保険給付の対象
- 労災保険の保険給付は、業務災害に関する保険給付、複数業務要因災害に関する保険給付、通勤災害に関する保険給付、二次健康診断等給付の4つからなる。複数業務要因災害は、複数の事業に雇用される労働者について、二以上の事業の業務を要因とする負傷・疾病・障害・死亡をいう。
- 労災保険の管掌
- 労働者災害補償保険(労災保険)は、政府が管掌する。保険者は国で、実際の事務は厚生労働省の都道府県労働局と労働基準監督署が行う。保険料は原則として事業主が全額を負担する。
- 労災保険法の目的
- 労災保険法の目的は、業務上の事由、事業主が同一でない二以上の事業に使用される労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由、または通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡などに対して、迅速かつ公正な保護をするため必要な保険給付を行い、あわせて社会復帰の促進、遺族の援護などを図ることである。
- 業務災害の保険給付
- 業務災害に関する保険給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付の7種類である。通勤災害の給付は名称から「補償」が外れ(療養給付など)、葬祭料は葬祭給付となる。
- 特別加入
- 特別加入とは、労働者ではないため本来は労災保険の対象外である人のうち、業務の実態から保護が必要な人に、任意の加入を認める制度である。中小事業主とその家族従事者など(第1種)、一人親方や特定作業従事者など(第2種)、海外に派遣される人(第3種)が対象で、申請して政府の承認を受けると加入できる。 中小事業主は労働保険事務組合に事務を委託していることが要件となる。
- 通勤の定義
- 労災保険の通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間の往復などの移動を、合理的な経路と方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除く。単身赴任者の帰省先と赴任先の間や、複数の就業場所の間の移動も含まれる。 移動の経路を逸脱し、または中断した場合は、その間とその後は通勤に当たらない。ただし、日用品の購入など日常生活上必要な行為をやむを得ず最小限度で行う場合は、経路に戻った後は再び通勤となる。
- 通勤災害の保険給付
- 通勤災害に関する保険給付は、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付の7種類である。内容は業務災害の給付とほぼ同じだが、療養給付を受ける人からは原則として200円を超えない範囲で一部負担金を徴収する。休業の最初の3日間について事業主の補償義務はない。
- 適用事業(労働者災害補償保険法)
- 労災保険は、労働者を使用する事業を適用事業とし、労働者を1人でも使用すれば原則として強制的に適用される。国の直営事業や官公署の事業(非現業)は適用されない。 個人経営の小規模な農林水産業の一部は暫定任意適用事業とされ、事業主の申請と認可で加入する。
- 遺族補償給付
- 遺族補償給付とは、労働者が業務上の事由で死亡した場合に、遺族に支給される労災保険の給付で、遺族補償年金と遺族補償一時金がある。遺族補償年金は、労働者の死亡当時その収入で生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹のうち、一定の年齢・障害の要件を満たす人に支給される(妻には年齢・障害の要件がない)。年金を受ける遺族がいないときは、遺族補償一時金が支給される。
- 障害補償給付
- 障害補償給付とは、業務上の負傷・疾病が治った(症状が固定した)後に障害が残った場合に支給される労災保険の給付である。障害等級第1級から第7級までは障害補償年金、第8級から第14級までは障害補償一時金が支給される。
- 給付基礎日額
- 給付基礎日額とは、労災保険の保険給付の額を計算する基礎となる日額で、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額である。算定事由発生日は、負傷や死亡の原因となった事故が発生した日、または診断によって疾病の発生が確定した日となる。 平均賃金相当額が適当でない場合は政府が算定し、年金などには年齢階層別の最低限度額・最高限度額が適用される。複数事業労働者は、各事業の賃金を合算して算定する。
- 療養補償給付
- 療養補償給付とは、業務上の負傷・疾病について、労災保険から行う医療の給付である。労災病院や指定医療機関で治療などを受ける療養の給付(現物給付)が原則で、療養の給付が困難な場合などは療養の費用が支給される。範囲は診察、薬剤、処置・手術、入院、看護、移送などで、傷病が治る(症状が固定する)まで行われ、業務災害では自己負担はない。
- 傷病補償年金
- 傷病補償年金とは、業務上の負傷・疾病の療養開始後1年6か月を経過した日またはその日以後に、傷病が治っておらず、その障害の程度が傷病等級第1級から第3級に該当する場合に支給される年金である。労働者の請求ではなく、政府(所轄の労働基準監督署長)の職権で支給が決定される。 傷病補償年金を受ける人には休業補償給付は支給されないが、療養補償給付は引き続き受けられる。
- 介護補償給付
- 介護補償給付とは、障害補償年金または傷病補償年金を受ける権利がある人のうち、一定の障害(第1級の全部と、第2級の精神神経・胸腹部臓器の障害)があり、常時または随時介護を受けている人に、介護を受けている期間支給される給付である。障害者支援施設に入所して生活介護を受けている間や、病院・診療所に入院している間は支給されない。
- 複数業務要因災害
- 複数業務要因災害とは、事業主が同一でない二以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)について、二以上の事業の業務を要因とする負傷・疾病・障害・死亡をいう。1つの事業の業務上の負荷だけでは労災認定されない場合でも、複数の事業の負荷を総合して評価し、保険給付が行われる。2020年9月に新設された。
雇用保険法(21語)
- 基本手当の受給期間
- 基本手当の受給期間とは、基本手当を受けられる期間のことで、原則として離職の日の翌日から起算して1年間である。所定給付日数が多い人は、その分だけ1年に加算される。 受給期間内に妊娠・出産・育児などの理由で引き続き30日以上働けない場合は、申出によりその日数を加算でき、加算後の期間は最長4年となる。受給期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても支給されない。
- 基本手当の受給資格
- 基本手当の受給資格は、原則として、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることである。倒産・解雇などによる特定受給資格者や、やむを得ない理由による特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上あればよい。 被保険者期間の1か月は、賃金支払の基礎となった日数が11日以上、またはその時間数が80時間以上ある月で数える。
- 基本手当の待期
- 基本手当の待期とは、受給資格者が離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後、失業している日(傷病で働けない日を含む)が通算して7日に満たない間は基本手当を支給しないというしくみである。待期は離職理由にかかわらず全員に適用され、給付制限はこの待期が満了した後から始まる。
- 失業の定義
- 雇用保険法上の失業とは、被保険者が離職し、労働の意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態をいう。働く意思や能力がない人(病気で働けない、就職を希望していないなど)は、離職していても失業には当たらない。
- 失業等給付の体系
- 雇用保険の失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4つからなる。育児休業給付などの育児休業等給付は、失業等給付とは別の給付として位置づけられている。求職者給付の中心が一般被保険者の基本手当である。
- 失業等給付の内訳
- 求職者給付の内容は被保険者の種類で異なる。一般被保険者は基本手当・技能習得手当・寄宿手当・傷病手当、高年齢被保険者は高年齢求職者給付金、短期雇用特例被保険者は特例一時金、日雇労働被保険者は日雇労働求職者給付金を受ける。
- 短時間労働者等の適用除外
- 雇用保険では、1週間の所定労働時間が20時間未満の人と、同じ事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない人は、原則として被保険者にならない(日雇労働被保険者に該当する場合などを除く)。 2024年の法改正で、週の所定労働時間の要件は2028年10月から10時間以上に広がることが決まっている。
- 自己都合退職等の給付制限
- 給付制限とは、自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された人や、正当な理由なく自己の都合で退職した人について、待期期間の満了後、1か月以上3か月以内で公共職業安定所長が定める期間、基本手当を支給しないことである。 2025年4月以降、正当な理由のない自己都合退職の給付制限期間は原則1か月とされ、離職前や離職後に一定の教育訓練を受けた場合は給付制限が解除される。
- 被保険者の定義
- 雇用保険の被保険者とは、適用事業に雇用される労働者で、適用除外(週の所定労働時間が20時間未満の人など)に該当しない人をいう。被保険者は、一般被保険者、高年齢被保険者(65歳以上)、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の4種類に分かれる。
- 適用事業(雇用保険法)
- 雇用保険は、労働者が雇用される事業を適用事業とし、労働者を1人でも雇用すれば原則として強制的に適用される。ただし、個人経営で常時5人未満の労働者を雇用する農林水産の事業(一部を除く)は、当分の間、暫定任意適用事業とされる。
- 雇用保険法の目的
- 雇用保険法の目的は、失業等給付と育児休業等給付を行うことで、労働者の生活と雇用の安定を図り、就職を促進することと、二事業(雇用安定事業・能力開発事業)を行うことで、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、能力の開発と向上その他労働者の福祉の増進を図ることである。
- 基本手当
- 基本手当とは、雇用保険の一般被保険者だった人が離職して失業している間、生活の安定と再就職を支えるために支給される求職者給付である。原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が12か月以上あることが要件で、公共職業安定所で求職の申込みをし、失業の認定を受けた日について支給される。 1日あたりの額(基本手当日額)は賃金日額の一定割合で、支給される日数(所定給付日数)は離職理由・年齢・被保険者であった期間で決まる。
- 基本手当日額
- 基本手当日額とは、基本手当の1日あたりの額で、賃金日額に一定の率を掛けて計算する。賃金日額は、原則として被保険者期間の最後の6か月間に支払われた賃金の総額を180で割った額で、賞与など臨時の賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含めない。 率は賃金日額が低いほど高く、原則100分の80から100分の50(60歳以上65歳未満は100分の45)までの範囲となる。賃金日額には年齢区分ごとの上限と下限がある。
- 所定給付日数
- 所定給付日数とは、基本手当を受けられる日数の上限で、離職理由、離職時の年齢、被保険者であった期間(算定基礎期間)などで決まる。自己都合退職などの一般の離職者は90日から150日、倒産・解雇などによる特定受給資格者などは90日から330日、障害者などの就職困難者は150日から360日である。
- 特定受給資格者
- 特定受給資格者とは、倒産や事業所の廃止、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)など、再就職の準備をする時間的な余裕がないまま離職を余儀なくされた受給資格者をいう。受給資格の要件が離職の日以前1年間に被保険者期間6か月以上に緩和され、所定給付日数も一般の離職者より多くなる場合がある。
- 高年齢被保険者
- 高年齢被保険者とは、65歳以上の雇用保険の被保険者(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)である。失業したときは基本手当ではなく、一時金の高年齢求職者給付金が支給される。2つ以上の事業所で働く65歳以上の人は、合計の週所定労働時間などの要件を満たせば、申出により高年齢被保険者になれる(マルチジョブホルダー制度)。
- 高年齢求職者給付金
- 高年齢求職者給付金とは、高年齢被保険者が失業した場合に支給される一時金である。原則として離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることが要件で、額は基本手当日額に相当する額の30日分(被保険者であった期間が1年以上なら50日分)である。年金と調整されずに受け取れる。
- 教育訓練給付
- 教育訓練給付とは、働く人の主体的な能力開発を支援するため、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合に、支払った費用の一部が雇用保険から支給される給付である。一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の区分があり、区分ごとに給付率と上限額、必要な被保険者期間(原則3年以上、初めての場合は1〜2年以上)が異なる。
- 高年齢雇用継続給付
- 高年齢雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の被保険者で、被保険者であった期間が5年以上ある人の賃金が、60歳到達時の賃金の75%未満に下がった場合に支給される雇用継続給付である。基本手当を受けずに働き続ける人には高年齢雇用継続基本給付金、基本手当を受けた後に再就職した人には高年齢再就職給付金が支給される。 支給率は段階的に縮小され、2025年4月以降に60歳になる人は最大で賃金の10%となった。
- 育児休業給付金
- 育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者が原則1歳未満の子を養育するために育児休業をした場合に、休業中の所得を支えるため支給される給付で、育児休業等給付の一つである。原則として休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月などが12か月以上あることが要件となる。 額は休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%(休業開始から181日目以降は50%)。出生直後の一定期間に両親ともに休業した場合などには、出生後休業支援給付金が上乗せされる。
- 介護休業給付金
- 介護休業給付金とは、雇用保険の被保険者が要介護状態にある家族を介護するために介護休業をした場合に支給される給付である。同じ家族について通算93日を限度に3回まで分割して受けられ、額は休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%である(本則は40%で、附則により当分の間67%とされている)。育児休業と異なり、雇用継続給付に位置づけられる。
労働保険徴収法(13語)
- 一般保険料の額
- 一般保険料の額は、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額に、一般保険料率を掛けて計算する。 労災保険と雇用保険の両方の保険関係が成立している事業では、一般保険料率は労災保険率と雇用保険率を合わせた率になる。どちらか一方だけが成立している事業では、その保険の率だけを使う。
- 保険年度
- 保険年度とは、労働保険料の計算と申告の単位となる期間で、4月1日から翌年3月31日までをいう。概算保険料と確定保険料は保険年度ごとに申告・納付し、毎年6月1日から40日以内に前年度の確定保険料と当年度の概算保険料をあわせて申告する(年度更新)。
- 労働保険の定義
- 労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を総称したものである。労働保険徴収法は、両保険の保険関係の成立・消滅、保険料の納付の手続、労働保険事務組合などを一つの法律でまとめて定めている。
- 労働保険事務組合
- 労働保険事務組合とは、事業協同組合などの事業主の団体が、厚生労働大臣の認可を受け、構成員である中小事業主などの委託を受けて、労働保険料の納付などの労働保険事務を処理する団体である。 委託できるのは常時使用する労働者が一定数以下の事業主(原則300人以下、業種により50人・100人以下)で、印紙保険料に関する事務は委託できない。委託した中小事業主は労災保険に特別加入できる。
- 労災保険関係の成立
- 労災保険の適用事業では、その事業が開始された日に、労災保険の保険関係が法律上当然に成立する。事業主の届出や加入手続によって成立するのではない。事業主は保険関係が成立した日から10日以内に、保険関係成立届を所轄の行政機関に提出する。
- 印紙保険料の納付
- 印紙保険料とは、雇用保険の日雇労働被保険者について納める保険料である。事業主は、日雇労働被保険者に賃金を支払うつど、その者の日雇労働被保険者手帳に雇用保険印紙を貼り、消印して納付する。額は賃金の日額に応じた等級で決まる。
- 概算保険料の申告・納付期限
- 概算保険料の申告・納付期限は、事業の種類と成立の時期で異なる。継続事業は保険年度の6月1日から40日以内、保険年度の途中で保険関係が成立した継続事業は成立した日から50日以内、有期事業は保険関係が成立した日から20日以内である。
- 概算保険料の申告納付
- 概算保険料とは、労働保険料をその保険年度の賃金総額の見込額に基づいて前払いするもので、継続事業では保険年度の6月1日から40日以内に申告書を添えて納付する。年度が終わると確定保険料で精算する。 概算保険料の額が一定以上の場合などは、申請により3回に分けて納付する延納ができる。
- 確定保険料の申告
- 確定保険料とは、保険年度が終わった後に、実際に支払った賃金総額に基づいて計算した労働保険料である。継続事業の事業主は、次の保険年度の6月1日から40日以内に確定保険料申告書を提出し、納付済みの概算保険料との差額を精算する。不足額は納付し、超過額は次の概算保険料に充当するか還付を受ける。
- 確定保険料の申告期限
- 確定保険料の申告期限は、継続事業は次の保険年度の6月1日から40日以内、保険年度の途中で保険関係が消滅した事業は消滅した日から50日以内、有期事業は保険関係が消滅した日(事業の終了日など)から50日以内である。
- 継続事業の一括
- 継続事業の一括とは、事業主が同じで、労災保険率表の事業の種類が同じなど一定の要件を満たす二以上の継続事業について、事業主が申請し厚生労働大臣の認可を受けることで、指定した一つの事業にまとめて労働保険料の申告・納付をできる制度である。一括されたほかの事業の保険関係は消滅する。
- メリット制
- メリット制とは、一定規模以上の事業について、過去3保険年度の業務災害に関する保険給付の額と保険料の額の割合(収支率)に応じて、労災保険率を一定の範囲で上げ下げする制度である。労働災害が少ない事業主の保険料負担を軽くし、災害防止の努力を促す。継続事業では原則として労災保険率を40%の範囲で増減させる。
- 有期事業の一括
- 有期事業の一括とは、建設の事業や立木の伐採の事業で、事業主が同じであり、それぞれの事業の規模が一定未満であるなどの要件を満たす二以上の有期事業を、法律上当然に一つの事業とみなして継続事業と同じように労働保険料を申告・納付する仕組みである。継続事業の一括と違って、認可の手続は要らない。
労務管理その他の労働に関する一般常識(21語)
- 不合理な待遇の禁止
- 不合理な待遇の禁止とは、事業主が短時間労働者・有期雇用労働者の基本給や賞与などの待遇について、通常の労働者との間に不合理な相違を設けてはならないというルールである(均衡待遇)。 不合理かどうかは、待遇ごとに、職務の内容、職務の内容と配置の変更の範囲、その他の事情のうち、その待遇の性質と目的に照らして適切なものを考慮して判断する。職務の内容と変更の範囲が同じ場合は、差別的取扱いそのものが禁止される(均等待遇)。
- 不当労働行為
- 不当労働行為とは、使用者が労働組合や労働者の団結権・団体交渉権などを侵害する行為として、労働組合法で禁止されているものである。 組合員であることや組合活動を理由とする解雇などの不利益な取扱い、組合に加入しないことを雇用条件とすること(黄犬契約)、正当な理由のない団体交渉の拒否、組合の結成・運営への支配介入や経費援助、労働委員会への申立てなどを理由とする不利益な取扱いが該当する。救済は労働委員会に申し立てる。
- 主要労働統計の実施主体と周期
- 労働に関する主な統計は、実施する機関と調査の周期が決まっている。毎月勤労統計調査は厚生労働省が毎月行い、賃金・労働時間・雇用の動きを調べる。労働力調査は総務省統計局が毎月行い、完全失業率などを公表する。就業構造基本調査は総務省統計局が5年ごとに行う。いずれも統計法上の基幹統計を作るための調査である。
- 労働契約の内容の理解促進
- 使用者は、労働者に提示する労働条件と労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとされ、労働者と使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む)について、できる限り書面により確認するものとされている。
- 労働契約の原則
- 労働契約の原則とは、労働契約法が定める労働契約の基本ルールである。労働契約は労働者と使用者が対等の立場における合意に基づいて締結・変更すべきもの(合意の原則)とし、就業の実態に応じた均衡の考慮、仕事と生活の調和への配慮、信義に従い誠実に権利を行使し義務を履行すること、権利の濫用の禁止を定めている。
- 労働契約法の目的
- 労働契約法の目的は、労働者と使用者の自主的な交渉のもとで労働契約が合意により成立・変更されるという合意の原則などを定め、合理的な労働条件の決定・変更が円滑に行われるようにすることで、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することである。
- 募集・採用の均等な機会
- 事業主は、労働者の募集と採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。男女雇用機会均等法が定める義務で、男性のみ・女性のみの募集や、合理的な理由なく身長・体重・転居を伴う転勤を要件とする間接差別も禁止される。
- 合意による労働契約の変更
- 労働者と使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。合意の原則を変更の場面で確認した規定で、就業規則の変更による労働条件の変更は別の規定(第9条・第10条)で扱われる。
- 安全配慮義務
- 安全配慮義務とは、使用者が、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務である。もとは最高裁の判例で認められた考え方で、労働契約法に明文化された。特段の合意がなくても労働契約に当然に伴う義務で、違反すると損害賠償責任を負う。
- 就業規則による不利益変更
- 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更して労働者に不利益に労働条件を変更することはできない(原則)。例外として、変更後の就業規則を労働者に周知させ、変更が労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などに照らして合理的なものであるときは、労働条件は変更後の就業規則によることになる。
- 就業規則の法的規範性と合理性(秋北バス事件)
- 秋北バス事件(最高裁大法廷・昭和43年12月25日判決)は、就業規則が合理的な労働条件を定めている限り法的規範としての性質を持ち、労働者は内容を知っていたかどうかや個別に同意したかどうかにかかわらず適用を受けると判断した。新たな就業規則の作成・変更で労働者に不利益な条件を一方的に課すことは原則として許されないが、合理的なものであれば反対する労働者にも適用されるとした。この考え方は労働契約法第7条・第10条に取り入れられている。
- 最低賃金の効力
- 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めた場合、その部分は無効となり、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなされる。最低賃金には地域別最低賃金と特定最低賃金がある。
- 有期労働契約の期間中解雇
- 使用者は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間に労働者を解雇することができない。期間の定めのない契約の解雇よりも厳しく判断される。また、必要以上に短い期間を定めて契約を反復更新しないよう配慮しなければならない。
- 派遣可能期間の制限
- 労働者派遣の受入れには期間の制限がある。派遣先の同じ事業所で派遣を受け入れられる期間は原則3年で、過半数労働組合などの意見を聴けば延長できる(事業所単位)。また、同じ派遣労働者を派遣先の同じ組織単位(課など)に3年を超えて派遣することはできない(個人単位)。 無期雇用の派遣労働者や60歳以上の人などは期間制限の対象外である。
- 育児休業の申出
- 労働者は、事業主に申し出ることにより、1歳に満たない子を養育するために育児休業をすることができる。保育所に入れないなどの事情があれば1歳6か月まで、さらに2歳まで延長できる。原則として2回まで分割して取得できる。 これとは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる出生時育児休業(産後パパ育休)がある。有期雇用労働者は、子が1歳6か月になるまでに契約が満了することが明らかでないことが要件となる。
- 解雇権濫用法理
- 解雇権濫用法理とは、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とするルールである。最高裁の判例で確立した考え方が、労働契約法に明文化された。解雇予告の手続を守っていても、この要件を満たさない解雇は無効になる。
- 障害者の雇用義務と法定雇用障害者数
- 事業主は、雇用する労働者の数に障害者雇用率を掛けた数(1人未満の端数は切り捨て)以上の対象障害者を雇用しなければならない。民間企業の法定雇用率は段階的に引き上げられ、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%とされた。 雇用率を満たさない一定規模以上の事業主は障害者雇用納付金を納め、超えて雇用する事業主には調整金が支給される。
- 高年齢者の雇用確保措置と就業確保措置
- 65歳未満の定年を定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければならない(義務)。 さらに、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、70歳までの定年引上げや継続雇用、業務委託契約などの措置(高年齢者就業確保措置)を講ずるよう努めなければならない(努力義務)。定年を定める場合は60歳を下回ることができない。
- 介護休業
- 介護休業とは、労働者が、要介護状態(2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するためにする休業である。対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割して取得できる。対象家族は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫である。
- 労働組合
- 労働組合法上の労働組合とは、労働者が主体となって自主的に、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主な目的として組織する団体またはその連合団体である。役員や人事に直接の権限を持つ監督的地位にある人など、使用者の利益を代表する人の参加を許すものや、使用者から経費の援助を受けるものなどは、法律上の労働組合に当たらない。
- 労働協約
- 労働協約とは、労働組合と使用者またはその団体との間の、労働条件などに関する取り決めで、書面に作成し、両当事者が署名または記名押印することで効力を生じる。有効期間は3年を超えることができない。労働協約に定める労働条件の基準に違反する労働契約の部分は無効となり、その基準による(規範的効力)。 一つの工場事業場で常時使用される同種の労働者の4分の3以上が一つの労働協約の適用を受けるときは、残りの同種の労働者にも適用される(一般的拘束力)。
社会保険に関する一般常識(13語)
- 不正行為の指示等の禁止
- 社会保険労務士は、不正に労働社会保険に関する法令に基づく保険給付を受けること、不正に保険料の賦課や徴収を免れることなど、法令に違反する行為について、指示をし、相談に応じ、その他これらに類する行為をしてはならない。社会保険労務士の禁止行為の一つで、違反には罰則がある。
- 介護保険の保険者
- 介護保険の保険者は、市町村と特別区(東京23区)である。保険者は介護保険の財政を運営し、要介護・要支援の認定、保険給付、第1号被保険者の保険料の徴収などを行う。国・都道府県・医療保険者・年金保険者は、それぞれの立場で保険者を支える。
- 介護保険の被保険者区分
- 介護保険の被保険者は2つに分かれる。市町村の区域内に住所がある65歳以上の人が第1号被保険者、市町村の区域内に住所がある40歳以上65歳未満の医療保険加入者が第2号被保険者である。 第2号被保険者が保険給付を受けられるのは、要介護・要支援の状態が加齢に伴う特定疾病によって生じた場合に限られる。保険料の徴収方法も区分で異なる。
- 児童手当の支給要件
- 児童手当は、支給要件児童(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童)を監護し、かつ生計を同じくする父母などで、日本国内に住所がある人に支給される。2024年10月の改正で、所得制限がなくなり、支給対象が高校生年代まで広がった。
- 品位保持と知識習得
- 社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令と実務に精通して、公正な立場で誠実にその業務を行わなければならない(社会保険労務士の職責)。信用や品位を害する行為は禁止され、研修を受けて資質の向上に努めることも求められる。
- 国民健康保険の被保険者
- 都道府県の区域内に住所がある人は、その都道府県と市町村(特別区を含む)が行う国民健康保険の被保険者になる。ただし、健康保険などの被用者保険の被保険者とその被扶養者、後期高齢者医療の被保険者、生活保護を受けている世帯の人などは適用除外となる。
- 市町村国保の地域保険者
- 市町村が行う国民健康保険は、都道府県と、その都道府県内の市町村(特別区を含む)が保険者となって行う。2018年4月から都道府県が財政運営の責任主体となり、市町村は資格の管理、保険料の賦課・徴収、保険給付などを担う。このほか、同じ業種の人で組織する国民健康保険組合も保険者になれる。
- 後期高齢者医療の実施主体
- 後期高齢者医療制度の運営は、都道府県の区域ごとに、その区域内のすべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が行う。被保険者は、広域連合の区域内に住所がある75歳以上の人と、65歳以上75歳未満で一定の障害があると広域連合の認定を受けた人である。保険料の徴収は市町村が行う。
- 確定拠出年金の実施主体
- 確定拠出年金には企業型と個人型(iDeCo)がある。企業型年金は厚生年金保険の適用事業所の事業主が単独または共同で実施し、個人型年金は国民年金基金連合会が実施する。拠出した掛金と運用の結果で将来の給付額が決まる。
- 社会保険労務士の使命
- 社会保険労務士は、労働と社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて、適切な労務管理の確立と個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上、社会保障の向上と増進に資し、豊かな国民生活と活力ある経済社会の実現に資することを使命とする。
- 社会保険審査制度
- 社会保険審査制度とは、健康保険・厚生年金保険・国民年金などの処分に不服がある人が、行政内部で救済を求める仕組みである。まず地方厚生局に置かれる社会保険審査官に審査請求をし(処分があったことを知った日の翌日から3か月以内)、その決定に不服があれば厚生労働省に置かれる社会保険審査会に再審査請求をする(決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内)。
- 秘密を守る義務
- 開業社会保険労務士や社会保険労務士法人の社員などは、正当な理由なく、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならない。開業社会保険労務士や社員でなくなった後も同じ義務を負い、違反には罰則がある。
- 船員保険の保険者と被保険者
- 船員保険は、全国健康保険協会が管掌する。被保険者は、船員として船舶所有者に使用される人と、疾病任意継続被保険者である。2010年1月から、船員保険の職務外の年金部分は厚生年金保険に、職務上の部分の多くは労災保険に統合され、現在は医療(職務外)と独自の上乗せ給付などを行っている。
健康保険法(17語)
- 任意継続被保険者制度
- 任意継続被保険者制度とは、会社を辞めるなどして健康保険の被保険者資格を失った人が、希望すれば引き続き最長2年間、同じ健康保険の被保険者でいられる制度である。 資格喪失日の前日まで継続して2か月以上被保険者であったことが要件で、資格喪失日から20日以内に申し出る(正当な理由があれば期間後も受理できる)。保険料は事業主負担がないため全額自己負担となり、原則として傷病手当金・出産手当金は支給されない。
- 健康保険の保険者
- 健康保険の保険者は、全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合である。健康保険組合の組合員である被保険者の保険は健康保険組合が、それ以外の被保険者の保険は全国健康保険協会が管掌する。任意継続被保険者の保険も、資格喪失前と同じ保険者が管掌する。
- 健康保険の被保険者
- 健康保険の被保険者とは、適用事業所に使用される者と任意継続被保険者をいう。ただし、船員保険の被保険者、臨時に使用される者、季節的業務に使用される者などは被保険者にならない(適用除外)。短時間労働者は、所定労働時間などの要件を満たす場合に被保険者となる。
- 健康保険法の目的
- 健康保険法の目的は、労働者またはその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷、死亡または出産に関して保険給付を行い、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することである。業務上の災害は労災保険の対象となるため、健康保険の給付の対象から外れている。
- 傷病手当金
- 傷病手当金とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがの療養のため働けないときに、生活を支えるために支給される給付である。働けなくなった日から起算して3日を経過した日(4日目)から支給される。 額は1日につき、支給開始日以前の直近12か月の標準報酬月額の平均額の30分の1の3分の2に相当する額で、支給期間は支給を始めた日から通算して1年6か月である。任意継続被保険者には原則として支給されない。
- 出産手当金
- 出産手当金とは、健康保険の被保険者が出産のため仕事を休み、その間に報酬を受けられないときに支給される給付である。出産の日(予定日より後に出産したときは予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までの間で、労務に服さなかった期間が対象になる。 額は傷病手当金と同じく、1日につき標準報酬月額の平均額の30分の1の3分の2に相当する額である。
- 出産育児一時金
- 出産育児一時金とは、健康保険の被保険者が出産したときに、出産にかかる費用の負担を軽くするために支給される一時金である。額は政令で定められ、2023年4月以降は原則50万円(産科医療補償制度の対象とならない出産などは額が異なる)。被扶養者が出産したときは、家族出産育児一時金が支給される。
- 療養の給付
- 療養の給付とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがをしたときに、保険医療機関で受けられる医療そのもの(現物給付)である。診察、薬剤や治療材料の支給、処置・手術などの治療、居宅での療養上の管理と看護、病院への入院と看護が含まれる。 被保険者は窓口で一部負担金(70歳未満は原則3割)を支払う。入院時の食事療養などは別の給付となる。
- 被扶養者の生計維持要件
- 健康保険の被扶養者とは、被保険者の直系尊属・配偶者(事実婚を含む)・子・孫・兄弟姉妹で、主として被保険者により生計を維持する人などをいう。三親等内のその他の親族などは、同一世帯に属することも必要になる。原則として日本国内に住所があることも要件である。 生計維持の収入の目安は通知で定められ、年間収入が原則130万円未満(60歳以上または一定の障害者は180万円未満。被保険者の配偶者を除く19歳以上23歳未満の被扶養者は、2025年10月から150万円未満)で、同居の場合は被保険者の収入の2分の1未満(別居の場合は被保険者からの仕送り額より少ないこと)とされている。
- 高額療養費
- 高額療養費とは、健康保険で医療機関に支払った一部負担金などが、1か月(暦月)の自己負担限度額を超えたときに、その超えた額が支給される給付である。自己負担限度額は年齢と所得の区分で政令により定められている。 同じ世帯で一定額以上の負担を合算できる世帯合算や、直近12か月に3回以上該当した場合に4回目から限度額が下がる多数回該当の仕組みがある。入院時の食事代や差額ベッド代は対象外である。
- 標準報酬月額
- 標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の保険料と保険給付の額を計算するために、被保険者の報酬月額を一定の幅で区切った等級に当てはめて決める額である。健康保険は第1級から第50級まで、厚生年金保険は第1級から第32級までの等級がある。 決め方には、資格取得時決定、毎年1回の定時決定、報酬が大きく変わったときの随時改定、育児休業等終了時改定などがある。
- 定時決定
- 定時決定とは、毎年7月1日現在の被保険者について、その年の4月・5月・6月に受けた報酬の平均額をもとに標準報酬月額を決め直すことである。報酬支払基礎日数が17日(一定の短時間労働者は11日)未満の月は計算から除く。決定した標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで使われる。
- 随時改定
- 随時改定とは、昇給・降給などで固定的賃金が変動し、変動した月から継続した3か月間の報酬の平均額で計算した標準報酬月額が、従前と比べて2等級以上の差が生じた場合に、標準報酬月額を改定することである。3か月とも報酬支払基礎日数が17日以上あることが必要で、変動月から4か月目に改定される。
- 標準賞与額
- 標準賞与額とは、被保険者が賞与を受けた月に、その賞与額の1,000円未満を切り捨てて決める額で、保険料の計算などに使う。上限があり、健康保険では年度(4月から翌年3月)の累計額573万円、厚生年金保険では1か月あたり150万円である。
- 一部負担金
- 一部負担金とは、健康保険で療養の給付を受ける被保険者が、保険医療機関の窓口で支払う費用の一部である。割合は、70歳未満が3割、70歳以上75歳未満が原則2割(一定以上の所得がある人は3割)である。被扶養者の療養は家族療養費として支給され、義務教育就学前の子の自己負担は2割となる。
- 埋葬料
- 埋葬料とは、健康保険の被保険者が死亡したときに、その人によって生計を維持されていた人で埋葬を行うものに支給される給付で、額は政令で定める5万円である。埋葬料を受ける人がいない場合は、実際に埋葬を行った人に、5万円の範囲内で埋葬に要した費用(埋葬費)が支給される。被扶養者が死亡したときは家族埋葬料が支給される。
- 日雇特例被保険者
- 日雇特例被保険者とは、健康保険の適用事業所に使用される日雇労働者で、健康保険法の特例の対象となる人である。日々雇い入れられる人、2か月以内の期間を定めて使用される人などが該当する。保険者は全国健康保険協会で、事業主が賃金を支払うつど日雇特例被保険者手帳に健康保険印紙を貼って保険料を納付する。
厚生年金保険法(15語)
- 保険料の負担
- 厚生年金保険の保険料は、被保険者と事業主がそれぞれ2分の1ずつ負担する(労使折半)。事業主は、自分の負担分と被保険者の負担分をあわせて納付する義務を負い、被保険者の負担分は報酬から控除できる。保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けて計算する。
- 保険給付の種類
- 厚生年金保険の保険給付は、老齢厚生年金、障害厚生年金と障害手当金、遺族厚生年金である。これとは別に、日本国籍を持たない人が出国後に請求できる脱退一時金が附則で定められている。
- 厚生年金保険の管掌
- 厚生年金保険は、政府が管掌する。被用者年金一元化(2015年10月)以後は、民間の会社員などの事務は厚生労働大臣(日本年金機構)が、公務員や私学教職員の事務は各共済組合などが実施機関として行う。
- 厚生年金保険法の目的
- 厚生年金保険法の目的は、労働者の老齢、障害または死亡について保険給付を行い、労働者とその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することである。
- 当然被保険者
- 当然被保険者とは、厚生年金保険の適用事業所に使用される70歳未満の者で、本人の意思にかかわらず法律上当然に被保険者になる人をいう。臨時に使用される人などは適用除外となる。70歳以上で老齢年金の受給資格期間を満たさない人は、任意に加入する高齢任意加入被保険者になることができる。
- 老齢厚生年金の支給要件
- 老齢厚生年金は、厚生年金保険の被保険者期間がある人が、65歳以上であり、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしたときに支給される。額は報酬比例の年金額が基本で、要件を満たせば加給年金額が加算される。 生年月日によっては、65歳前に特別支給の老齢厚生年金(被保険者期間1年以上が要件)を受けられる。
- 被保険者資格の取得
- 厚生年金保険の被保険者は、適用事業所に使用されるに至った日、使用される事業所が適用事業所になった日、適用除外に該当しなくなった日のいずれかに資格を取得する。事業主は、資格を取得した日から5日以内に資格取得届を提出する。
- 被保険者資格の喪失
- 厚生年金保険の被保険者は、死亡したとき、適用事業所に使用されなくなったときなどは、その日の翌日に資格を喪失する。ただし、70歳に達したときは、その日(誕生日の前日)に資格を喪失する。喪失日が翌日になるか当日になるかが試験でよく問われる。
- 遺族厚生年金
- 遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者が死亡したときや、老齢厚生年金の受給資格期間(25年以上)を満たした人が死亡したときなどに、その人によって生計を維持されていた遺族に支給される年金である。 遺族の範囲は配偶者・子・父母・孫・祖父母で、順位がある。額は原則として死亡した人の報酬比例部分の年金額の4分の3に相当する額。被保険者中の死亡などでは保険料納付要件も必要となる。
- 障害厚生年金
- 障害厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者期間中に初診日がある病気やけがで、障害認定日に障害等級1級・2級・3級のいずれかに該当する程度の障害の状態にある人に支給される年金である。保険料納付要件も満たす必要がある。 1級・2級は障害基礎年金とあわせて支給され、3級は障害厚生年金だけが支給される(最低保障額あり)。3級より軽い一定の障害には一時金の障害手当金がある。
- 在職老齢年金
- 在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受ける人が厚生年金保険の被保険者として働いている場合などに、賃金(総報酬月額相当額)と年金(基本月額)の合計が支給停止調整額を超えると、超えた額の2分の1に相当する年金額が支給停止される仕組みである。70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に使用される人にも適用される。老齢基礎年金は支給停止の対象にならない。
- 加給年金額
- 加給年金額とは、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が老齢厚生年金を受けられるようになった時点で、その人によって生計を維持されている65歳未満の配偶者、または18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子(障害等級1・2級の子は20歳未満)がいる場合に、老齢厚生年金に加算される額である。配偶者が65歳になると加算は終わる。
- 中高齢寡婦加算
- 中高齢寡婦加算とは、夫の死亡により遺族厚生年金を受ける妻で、夫の死亡当時40歳以上65歳未満であり、遺族基礎年金を受けられる子がいない人などに、40歳から65歳になるまで遺族厚生年金に加算される額である。額は遺族基礎年金の額の4分の3に相当する。夫が長期要件の場合は、夫の被保険者期間が20年以上あることが必要である。
- 合意分割
- 合意分割とは、離婚した場合に、当事者の合意または家庭裁判所の決定に基づき、婚姻期間中の厚生年金保険の標準報酬(保険料納付の記録)を分割する制度である。按分割合は、分割を受ける人の持ち分が2分の1を上限とする範囲で決める。請求には期限があり、原則として離婚等をしたときから5年以内(2026年4月から。それまでは2年以内)に厚生労働大臣などに請求する。
- 3号分割
- 3号分割とは、2008年4月1日以後の婚姻期間中に第3号被保険者だった期間について、離婚した場合に、第3号被保険者だった人の請求により、相手方の厚生年金保険の標準報酬を2分の1ずつ分割する制度である。当事者の合意は不要である。
国民年金法(21語)
- 保険料の法定免除
- 保険料の法定免除とは、国民年金の第1号被保険者が一定の事由に該当すると、申請をしなくても法律上当然に保険料の納付が免除される仕組みである。 障害基礎年金や障害厚生年金(1級・2級)の受給権者、生活保護法の生活扶助を受ける人などが対象で、該当した日の属する月の前月から免除される。本人が申し出れば、免除期間の保険料を納付することもできる。
- 保険料の申請免除
- 保険料の申請免除とは、国民年金の第1号被保険者が所得が少ないなどの要件を満たして申請し、厚生労働大臣が認めたときに、指定する期間の保険料の納付が免除される仕組みである。 全額免除のほか、4分の3・半額・4分の1の一部免除がある。免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間に算入され、年金額には免除の割合に応じて反映される。10年以内であれば後から追納できる。
- 国民年金保険料
- 国民年金保険料とは、政府が国民年金事業の費用に充てるために徴収する保険料である。第1号被保険者が月単位で納付し、世帯主と配偶者には連帯して納付する義務がある。第2号・第3号被保険者は個別に納付せず、厚生年金保険などから基礎年金拠出金として負担される。保険料額は法律で定める額に保険料改定率を掛けて毎年度決まる。
- 国民年金法の目的
- 国民年金法の目的は、日本国憲法第25条第2項に定める理念に基づき、老齢、障害または死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し、健全な国民生活の維持と向上に寄与することである。
- 寡婦年金
- 寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間と免除期間が合計10年以上ある夫が、年金を受けずに亡くなった場合に、生計を維持され婚姻関係が10年以上続いた65歳未満の妻に支給される年金である。 支給は妻が60歳から65歳になるまでで、額は夫の第1号被保険者期間で計算した老齢基礎年金額の4分の3。夫が障害基礎年金の受給権者だった場合や老齢基礎年金を受けたことがある場合は支給されない。
- 第1号被保険者
- 国民年金の第1号被保険者とは、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人で、第2号被保険者・第3号被保険者のいずれにも該当しない人である。自営業者、学生、無職の人などが該当し、国民年金保険料を自ら納付する。厚生年金保険法に基づく老齢給付などを受けられる人は除かれる。
- 老齢基礎年金の支給要件
- 老齢基礎年金は、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合わせた受給資格期間が10年以上ある人が、65歳に達したときに支給される。額は満額(20歳から60歳までの40年間すべて納付した場合)に、納付済期間などの月数の割合を掛けて計算する。 本人の希望で60歳から繰り上げ、または66歳以降に繰り下げて受給することもできる。
- 被保険者区分
- 国民年金の被保険者は3種類に分かれる。第1号被保険者は国内に住所がある20歳以上60歳未満の自営業者・学生など、第2号被保険者は厚生年金保険の被保険者、第3号被保険者は第2号被保険者に扶養される配偶者で20歳以上60歳未満の人である。 このほか、60歳以上65歳未満の人などが任意に加入する任意加入被保険者がある。
- 遺族基礎年金
- 遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者などが死亡したときに、その人によって生計を維持されていた子のある配偶者、または子に支給される年金である。ここでいう子は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子か、20歳未満で障害等級1級・2級の子で、婚姻していない子をいう。 被保険者中の死亡などでは、保険料納付要件(納付済期間と免除期間が加入期間の3分の2以上など)を満たす必要がある。子の数に応じた加算がある。
- 障害基礎年金
- 障害基礎年金とは、国民年金の被保険者期間中などに初診日がある病気やけがで、障害認定日に障害等級1級または2級に該当する程度の障害の状態にある人に支給される年金である。初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済期間と免除期間が3分の2以上あることなどの保険料納付要件が必要である。 1級の額は2級の1.25倍で、子の加算がある。20歳前に初診日がある障害でも、所得制限つきで支給される。
- 第2号被保険者
- 国民年金の第2号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者である。会社員や公務員などが該当し、年齢の要件はないが、65歳以上で老齢年金の受給権がある人は除かれる。国民年金保険料を個別に納める必要はなく、厚生年金保険から基礎年金拠出金として負担される。
- 第3号被保険者
- 国民年金の第3号被保険者とは、第2号被保険者の配偶者で、主として第2号被保険者の収入により生計を維持する20歳以上60歳未満の人である。原則として日本国内に住所があることが要件となる。保険料を個別に納める必要はなく、届出は第2号被保険者の勤務先などを経由して行う。
- 付加保険料
- 付加保険料とは、国民年金の第1号被保険者などが、申し出て定額の保険料に上乗せして納める月額400円の保険料である。付加保険料を納めた月数に200円を掛けた額の付加年金が、老齢基礎年金に上乗せして支給される。国民年金基金の加入員は付加保険料を納められない。
- 追納
- 追納とは、国民年金の保険料の免除や学生納付特例・納付猶予を受けた期間の保険料を、後から納めることである。厚生労働大臣の承認を受けて、承認の月前10年以内の期間について納付でき、追納した期間は保険料納付済期間となる。免除を受けた年度の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、一定の額が加算される。
- 学生納付特例
- 学生納付特例とは、国民年金の第1号被保険者である学生で、本人の所得が一定額以下の人が申請して承認を受けると、在学中の保険料の納付が猶予される制度である。世帯主や配偶者の所得は問わない。猶予を受けた期間は老齢基礎年金の受給資格期間に算入されるが、年金額には反映されないため、10年以内に追納できる。
- 合算対象期間
- 合算対象期間(カラ期間)とは、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)の計算には算入されるが、年金額の計算には反映されない期間である。国民年金への加入が任意だった期間に加入しなかった期間(1986年3月以前の会社員の配偶者や、1991年3月以前の学生など)や、海外に住んでいた日本人の期間などが該当する。
- 繰下げ支給
- 繰下げ支給とは、老齢基礎年金や老齢厚生年金を65歳で受け取らず、66歳以降に請求して受け取ることで、遅らせた月数に応じて年金額が1か月あたり0.7%増える仕組みである。1952年4月2日以降に生まれた人は75歳まで繰り下げられ、最大84%増える。 反対に、60歳から65歳になるまでの間に早く受け取る繰上げ支給では、1か月あたり0.4%(1962年4月2日以降生まれ)減額され、減額は生涯続く。
- 初診日
- 初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日である。障害基礎年金・障害厚生年金では、初診日にどの年金制度の被保険者だったか、初診日の前日に保険料納付要件を満たしているかで、受給できる年金と可否が決まる。
- 障害認定日
- 障害認定日とは、障害の程度を認定する日で、初診日から起算して1年6か月を経過した日、またはその期間内に傷病が治った(症状が固定した)場合はその日である。障害認定日に障害等級に該当しなくても、その後65歳に達する日の前日までに該当するようになれば、請求により障害年金を受けられる(事後重症)。
- 死亡一時金
- 死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま死亡し、遺族基礎年金を受けられる遺族がいない場合に、生計を同じくしていた遺族に支給される一時金である。額は納付月数に応じて決まり、寡婦年金を受けられる妻はどちらか一方を選ぶ。
- 国民年金基金
- 国民年金基金とは、国民年金の第1号被保険者が、老齢基礎年金に上乗せする年金を受けるために任意で加入する公的な制度で、全国国民年金基金と職能型の基金がある。加入員は付加保険料を納めることができず、掛金は社会保険料控除の対象となる。
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